京都大学 原田研究室

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広域地域無線ネットワークWi-RANを用いた長距離4K映像伝送に成功
-6G時代における数10km超の通信エリアを持つ移動通信の実現を目指して-

京都大学大学院情報学研究科(以下「京都大学」)原田 博司教授の研究グループは、第6世代移動通信システム(6G)時代のシステムの要求条件の1つである数10km超のカバレッジの実現に向けて、広域地域無線ネットワークWi-RAN注1)を用いた長距離(10km超)4K映像伝送に成功いたしました。本研究では、VHF帯の周波数を用い、携帯電話の1/4〜1/20に相当する帯域幅の広域地域無線ネットワークWi-RANに映像圧縮率の高い伝送方式を統合した無線映像伝送システムを開発し、海を挟んで見通しが良いものの距離が16kmの経路、ならびに距離6kmと短いものの通信相手を見通せない経路においても、高精度4K映像を伝送ができることを実証しました。今回の実証実験結果から、従来型の移動通信システムではカバーできない空や海、宇宙空間においても、4K映像を利用した新しいアプリケーションが期待されます。

ポイント





1. 背景

第6世代移動通信システム(6G)では、数十km規模の広いエリアにおいて、4K映像などの情報を伝送可能な大容量通信が要求されています。この要件を満たす手段として高度化された衛星通信を利用する方法があります。衛星通信は広い帯域を確保できる一方、高い周波数帯を用いているため森林などの環境では電波が遮蔽されやすいという課題があります。
この課題は、VHF帯などの低い周波数帯を利用することで低減できます。京都大学では、広域地域無線ネットワークWi-RANを開発し、数十kmから100km程度の伝送が可能であることを実証してきました。しかし、Wi-RANは長距離伝送が可能である一方、1チャネルあたりに利用できる帯域幅が狭く(携帯電話の1/4〜1/20に相当)、4K映像などの大容量データを伝送することは困難でした。


2. 研究成果

京都大学では今回、Wi-RANに映像圧縮率の高い伝送方式を統合した無線映像伝送システムを開発しました。さらに、本システムを用いて、2つの伝搬経路における映像伝送実験を実施しました。1つは対向する2か所間に障害物がなく、見通しが良いが距離が16kmの経路(経路1)、もう1つは距離6kmと短いが、対向する2か所間に山の端がわずかに掛り通信相手を見通せない経路(経路2)です。経路1,2とも基地局(受信点)は大分市の大分朝日放送の屋上に置き、片方の移動局(送信点)は経路1では別府市の十文字原展望台、経路2では大分市の大分マリーンパレス水族館「うみたまご」(以下「水族館うみたまご」)です。この2つの経路と断面図を図1に示します。経路2上に山の端が障害物になっているのが分かります。


映像伝送実験の経路と断面図

図2図3図4表1に測定に用いた無線映像伝送システムを示します。無線機に2本の八木アンテナを接続し、送信は1本のアンテナで行い、受信はダイバーシティ受信としています。アンテナは送信機と受信機が互いに対向するよう向きを調整しています。4K映像のエンコードとデコードはAV1対応の機器を開発し、利用しています。図2に4Kカメラ、キャプチャ、AV1エンコーダとWi-RAN無線機を示します。



送信装置(経路1、経路2共通)

経路1 送信装置(十文字原展望台)

経路2 送信装置(水族館うみたまご)

図4:受信装置(⼤分朝⽇放送)
伝送特性

各経路にて変調方式QPSK、16QAM、64QAM 符号化率1/2、3/4にて受信信号電力とデータ誤り率(BER)を計測、2つの経路で測定された受信信号電力とコンスタレーションを表2図5に示します。経路2の受信信号電力は距離比のみで考えると経路1より8.5dB強くなる想定ですが、障害物による遮蔽により約30dB近い損失があるものと考えられます。また、表2より、CN(搬送波対雑音比)は経路1で32dB、経路2で19dBであり、その差は13dBとなります。これを距離に換算すると4.5倍となり、本システムでは72km程度の映像伝送が可能と推定されます。また、経路1でも3dB以上のマージンをもって受信ができているため、このマージンが仮に3dBほどあれば、その差は16dBとなり、同一条件下においては100kmの伝送が可能と考えられます。


各経路での受信レベル

経路1 コンスタレーション

経路2 コンスタレーション

この2つの伝搬環境において4K映像伝送実験を行いました。映像伝送実験には変調方式16QAM 符号化率3/4を用いました。受信側で得られた映像のスクリーンショットを図6に示します。16km離れた経路1だけでなく(図6a)、途中に障害物があり見通し外である経路2の場合においても(図6b)十分精細な4K映像を送ることができました。



経路1 十文字原展望台からの映像

経路2 水族館うみたまごからの映像


3.今後の展開

今回開発したWi-RANと高圧縮技術を統合した無線映像伝送システムを用いることで、従来型の移動通信システムではカバーできない10kmを超えるカバレッジにおいても、4K映像を伝送できることが実証されました。今後は、本技術を活用し、空域や海上、さらには宇宙空間においても、4K映像を用いた新しいアプリケーションが期待されます。


4.謝辞

実験場所を提供いただいた大分朝日放送株式会社様、大分マリーンパレス水族館「うみたまご」様、別府市様に感謝します。
なお、本研究の一部は情報通信研究機構 (NICT) の「日米豪国際連携を通じた超カバレッジBeyond 5G無線通信・映像符号化標準化技術の研究開発(JPJ012368C05101)」並びに総務省の「電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)」によって実施されたものです。


用語解説

» 1. Wi-RAN(Wireless Regional Area Network):
数km~数10kmの範囲をカバーする地域無線ネットワーク(Regional Area Network)の呼称。携帯電話に比較して低い周波数帯(VHF帯、UHF帯)を用いて数10Mbps程度の伝送速度ながら数10kmの範囲内の通信を行う。主に地域系のブロードバンド回線およびIoT用の広域情報収集回線としての利用が期待されている。本Wi-RANシステムは、京都大学 原田博司研究室において、大容量伝送するための高能率受信方式が開発され、日立国際電気により製品開発、商用化が進められている。

» 2. 公共BB(BroadBand):
公共ブロードバンド移動通信システム(公共BB)は、アナログテレビ放送が終了し空きになったVHF帯を活用し映像伝送等を可能とする無線システムとして、公共機関に割り当てられている。

» 3. CN(Carrier-to-Noise ratio)
搬送波対雑音比のことを言い、無線信号電力と雑音電力の比のことをいう。CNが大きいほど雑音に対して大きな無線信号であることを示す。


[研究に関するお問い合わせ先]
京都大学 大学院情報学研究科 通信情報システムコース ディジタル通信分野
原田 博司(はらだ ひろし) 
TEL:075-753-5318
E-mail:contact [at] dco.i.kyoto-u.ac.jp

[報道・取材に関するお問い合わせ先]
京都大学 広報室 国際広報班
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