<ポイント>
現状、Bluetooth搭載各種機器は基本的に接続認証(ペアリング)が許可された一つのIoT機器にのみ接続できます。利用者が移動した場合は、別途移動先のIoT機器に再接続認証する必要性があり、データを収集するうえで再接続の時間が問題になっていました。今回開発した装置は、データをクラウドに上げる基地局用IoTゲートウェイと、複数のデータ中継用IoTゲートウェイから構成されます。各IoTゲートウェイはWi-SUN FANおよびBluetoothの通信機能を有します。Bluetooth搭載機器は、まずいずれか一つのIoTゲートウェイに接続し、接続時に認証に必要な情報が、Wi-SUN FANを通してすべての中継用IoTゲートウェイに共有されます。その結果、利用者が移動した場合でもBluetoothの再接続することなく情報をクラウドまで伝送することが可能になります。 この通信システムを用いて、Bluetooth搭載ウェアラブル機器およびBluetooth搭載マルチセンサー携帯型自動血圧計を接続し、環境・生体信号を同時にクラウド上に整備された超ビッグデータを創出基盤上に伝送することを確認しました。 |
※「Wi-SUN」および「Bluetooth」はそれぞれ、Wi-SUN AllianceおよびBluetooth SIG, Incの登録商標です。
本研究プログラムでは、各個人の生体情報時系列計測データ、工場に設置された各種機器からの時系列計測データ等を用い、疾病、稼働リスクを予見・先取で発見することができる各種社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォームに関する研究開発を行っています。特に医療系においてはBluetooth搭載機器が多くありますが、自身の通信距離は比較的短く、利用者が家の中を移動した場合、情報を効率的に収集することが困難でした。今回開発したシステムは、Bluetooth搭載機器からの計測データ及びBleutooth認証信号を長距離伝送可能で多段中継も可能なWi-SUN FANにより伝送することにより、利用者が移動してもBluetooth搭載機器からの情報をクラウドに伝送することが可能になり、より多くの環境における超ビッグデータの創出が可能になります。
ImPACT 原田 博司 プログラム・マネージャーの研究開発プログラムでは、現状のビッグデータ規模をはるかに凌ぐ「超ビッグデータ」の創出・活用を可能とする超ビッグデータプラットフォームを構築し、この技術による新たな社会応用として、製造工場へのサイバー攻撃、故障の撲滅を目指すファクトリセキュリティと予見先取ヘルスケア・医療サービスを目指すヘルスセキュリティに関する研究開発を行っています。
ヘルスセキュリティにおいて、心拍や血圧といった生体データと環境時系列データを取得することが可能なウェアラブル機器および医療機器の多くは国際無線通信規格Bluetoothを搭載しており、機器内に格納したデータを外部に取り出すことが可能です。データを外部に取り出すIoT機器の一つがIoTゲートウェイです。IoTゲートウェイは、Bluetoothを用いて取り出したデータ等を他の通信システムの信号に変換し、データをクラウドまで伝送します。現状、Bluetooth搭載各種機器は基本的に接続認証(ペアリング)が許可された一つのIoTゲートウェイに接続ができます。利用者が移動した場合は移動先の別のIoTゲートウェイに再接続認証する必要性があるため、この接続の時間が問題になっていました。また、Bluetooth自身の通信距離は比較的短いという問題もありました。
今回、国際無線通信規格Wi-SUN FAN及びBluetooth搭載IoTゲートウェイ、IoTブリッジを用いて、Bluetooth搭載ウェアラブル機器および医療機器等の各種機器からの情報を、利用者が移動しても広範囲に情報収集することができる通信システムを開発しました(図1)。
この通信システムは、データをクラウドに上げる基地局用IoTゲートウェイと、複数のデータ中継用IoTブリッジから構成されます。データ中継用IoTブリッジは新規開発され、はWi-SUN FANおよびBluetoothの通信機能を有します(図2)。Wi-SUN FAN自身は多段中継の機能を有しているため、中継用IoTブリッジ間を多段中継で接続し、基地局用IoTゲートウェイに接続させることが可能です。また、IoTブリッジ自身で照度、温度、湿度を測定することも可能です。(表1)
Bluetooth搭載機器は、まず、いずれか一つのIoTブリッジに接続します。接続時、認証に必要な情報は、Wi-SUN FANを用いて、すべての中継用IoTブリッジに共有されます。そして、利用者が移動した場合でもBluetoothの再接続することなく情報をクラウドまで伝送することが可能になります(図3)。
この通信システムを用いて、Bluetooth搭載ウェアラブル機器(エー・アンド・ディ社UW-302BLE)およびImPACT 原田 博司 プログラムにおいて自治医科大学 苅尾七臣 教授および株式会社エー・アンド・ディが開発したBluetooth搭載マルチセンサー携帯型自動血圧計(エー・アンド・ディ社TM-2441)を接続し、生体信号特に血圧脈波を同時にクラウド上に整備された超ビッグデータを創出基盤上に伝送することを確認しました(図1)。
今回開発した通信システムを実際の住宅環境に設置し、温度、湿度、照度等の環境時系列情報とマルチセンサー携帯型自動血圧計で測定した血圧脈波の時系列情報、さらに、ウェアラブル機器で取得した、活動時系列情報を同時にクラウド上に取得し、ImPACTプログラム内の自治医大 苅尾七臣 教授および株式会社エー・アンド・ディの研究チームと共同でビッグデータを用いた臨床エビデンス構築を目指します。
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![]() 認証情報はデータ中継用IoTブリッジ間で共有されるため、Bluetooth搭載機器が移動した場合においても再認証を行うことなく計測データを伝送することができる。 |
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Wi-SUNアライアンスが制定するスマートメータリング、配電自動化を実現するスマートグリッド及び、インフラ管理、高度道路交通システム、スマート照明に代表されるスマートシティを無線で実現するためのセンサー、メーターに搭載するIPv6で多段中継(マルチホップ)可能な通信仕様。2016年5月16日にWi-SUNアライアンスにおいて技術仕様バージョン1が制定。物理層部にIEEE 802.15.4g、データリンク層に IEEE 802.15.4/4e、アダプテーション層にIETF 6LowPANそしてネットワーク層部にIPv6,ICMPv6、トランスポート層にUDP、そして認証方式としてIEEE 802.1xを採用している。また製造ベンダー間の相互接続性を担保するための試験仕様等も提供されている。京都大学、ローム株式会社、株式会社日新システムズは2016年11月にWi-SUN FAN搭載の無線機の開発に成功している。詳細はhttp://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/161116_1.htmlを参照。
IEEE 802.15.4g規格をベースにエネルギーマネージメント、防災、工場等の各種アプリケーションを実現するために他のオープンな国際標準規格と融合させ、製造メーカー間で相互接続可能な国際無線通信規格「Wi-SUN Profile」を制定する任意団体。現在会員企業は全世界に100社以上。スマートメーターと宅内エネルギー管理システム(HEMS)との間の通信規格「Wi-SUN ECHONET」は全国の電力会社に採用。現在すでに当該仕様が搭載されているスマートメーターは1000万台以上出荷。今後は東京電力管内で2000万台以上出荷される予定。詳細はhttp://www.wi-sun.org を参照。
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