京都大学 原田研究室

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次世代スマートメーター/IoT向け国際無線通信規格Wi-SUN FANを用いた無線機1,000台の自律通信試験に成功

99.9%以上の通信成功率を達成し、高信頼なマルチホップネットワークを確立

京都大学 大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループ(以下 京都大学)と、株式会社日新システムズ(以下 日新システムズ)は、国際無線通信規格 Wi-SUN FAN(Field Area Network)を用いた無線機の大規模高密度環境における通信試験として、次世代スマートメーターの実運用で想定される1ネットワークあたり最大1,000台によるマルチホップを利用した自律通信試験を行うことに成功しました。今回の成果により数台~1,000台までのあらゆるシステムにWi-SUN FANが適用可能となります。また、次世代スマートメーターのような大規模な環境だけではなく、移動体との通信や、より多種、大容量のデータ通信が必要とされるスマートシティのような用途への適用が見込まれます。

ポイント


背景

スマートシティやスマートグリッドなど、屋外での通信ネットワークを実現するためには高品質でかつ建物等による遮蔽に対する耐障害性に優れた堅牢な無線通信ネットワークが必要となります。Wi-SUN FANはこれらの要求を満たす国際無線通信規格「Wi-SUN」の規格の一つで、電気・ガス・水道のメータリングのほか、スマートシティ、スマートグリッド、高度道路交通システム等のセンサー、モニター等を用いた各種インフラ、アプリケーションにおいて、相互運用可能な通信ネットワーク技術として期待されています。京都大学と日新システムズは、2019年1月に世界で初めてWi-SUN FAN 搭載の認証済み無線機の開発を行いました。さらに、2019年10月から総務省に採択された電波COE研究開発プログラム(※1)の一環として大規模高密度ネットワーク構築の研究を開始し、 2021年11月にはマルチホップ接続を駆使し多数の無線機からの情報を一つの基幹無線機に集約し収集する試験機を用いて500台の機器を接続するための各種要素技術の研究開発を行い、スマートメーターの実運用を想定した通信量のデータを各無線機から送信し、500台環境においても高品質な通信を実現させることに成功しました。しかし、2023年度以降導入が検討されている次世代スマートメーターの運用を想定すると最大1,000台の無線を1つの自律ネットワークで収容することが求められるため、1,000台のネットワーク構成でも高品質な通信が実現できるようWi-SUN FANのさらなる研究・開発が必要でした。


今回の成果

無線機1,000台の環境で高品質な通信を実現するため下記の2点について研究開発しました。
(1) Wi-SUN FANの通信制御に関する各種パラメータの最適値に関する研究
(2) 1,000台の無線機を収容するシングルボードコンピュータ対応無線機へのWi-SUN FANプロトコルスタックの移植
この研究開発の成果を搭載したWi-SUN FAN無線機1,000台を用いたマルチホップメッシュネットワークの構築および維持、さらに実運用で想定される通信量によるデータ通信を実現しました。(図1,2,3,4参照)また、次世代スマートメーター要件を満たす、累積で99.9%以上のデータ通信成功率を得ることに成功しました。


図1
図2
図3
図4

今後の展開

Wi-SUN FAN搭載無線機1,000台を用いた大規模実証を行うことで、Wi-SUN FANによるマルチホップを利用した自律ネットワークが次世代スマートメーターやスマートシティで要求される規模のネットワーク構成で実用が可能な性能をもっていることが確認できました。この成果により、最大1,000台のネットワークが複数存在する数千万台規模のシステムを構成することが可能となり、様々な用途での活用が期待できます。(図5参照)

図5

今回の大規模実証で用いた京都大学と日新システムズが共同開発を行ったプロトコルスタックでは、Wi-SUN FANの通信制御を司る様々なパラメータの値を容易に変更することが出来るため、大規模な環境だけではなく、移動体との通信や、より大容量のデータ通信が必要とされるような用途に合わせて、異なるチューニングを行うことで、あらたな利用シーンに適した通信パラメータを指定することが可能です。
さらに、今後は今回の成果で確立した実存する無線機による試験のデータとシミュレーション結果のデータとの整合を行うことで、より大規模な通信ネットワークの構築、維持、安定した通信を行うための条件などの調査を進めていきます。

(※1)本研究開発は、総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)電波COE研究開発プログラムの公募で採択された「電波利活用強靭化に向けた周波数創造技術に関する研究開発及び人材育成プログラム(JP196000002)」における共同型研究開発「Society 5.0の実現に向けた大規模高密度マルチホップ国際標準無線通信システム(Wi-SUN FAN)の研究開発」の一環として実施したものです。


関連する成果

次世代スマートメーター向け国際通信規格 Wi-SUN FANの大規模な高密度接続試験を行う試験機を開発(2021年1月28日 報道発表)
https://www.co-nss.co.jp/press/20210128.php

次世代スマートメーター/IoT向け国際標準規格 Wi-SUN FAN無線機500台の高密度接続試験に成功(2021年11月15日 報道発表)
https://www.co-nss.co.jp/press/20211115.php


用語説明

» Wi-SUN FAN (Field Area Network)
Wi-SUNアライアンスが制定するスマートメータリング、配電自動化を実現するスマートグリッドおよび、インフラ管理、高度道路交通システム、スマート照明に代表されるスマートシティを無線で実現するためのセンサー、メーターに搭載するIPv6でマルチホップ可能な通信仕様です。2016年5月16日にバージョン1がWi-SUN FANワーキンググループで制定され、現在は高速通信、低消費電力化などに対応したバージョン1.1の規格化が進められています。物理層にIEEE 802.15.4g、データリンク層に IEEE 802.15.4/4e、アダプテーション層にIETF 6LoWPANそしてネットワーク層部にIPv6、ICMPv6、トランスポート層にUDP、そして認証方式としてIEEE 802.1xを採用しています。また製造ベンダー間の相互接続性を担保するための試験仕様なども提供されています。京都大学と日新システムズでは、ローム株式会社と共同でこのWi-SUN FAN 搭載のWi-SUNアライアンス認証済み無線機の開発を2019年1月世界初で行いました。(IEEE 2857により標準化済み)

» 京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室について
京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室は、京都大学 大学院情報学研究科通信情報システム専攻に所属し、ディジタル通信分野に関する研究開発を行っています。特に原田博司教授は、2012年Wi-SUNアライアンス設立時の共同創業者(Founder member)であり、Wi-SUNアライアンス理事会議長(Chair of the Board)として長年活動し、またWi-SUNアライアンスHAN WG議長として、電力会社向け宅内スマートメーターシステム用Wi-SUNシステムの技術仕様策定、普及活動を行ってきました。原田博司研究室では、Wi-SUNシステム全般の研究開発を行っており、主に通信方式、電波伝搬・伝送、システム最適化、応用システム等の研究開発を行っています。

» 株式会社日新システムズについて
日新電機株式会社(東証プライム上場)の全額出資子会社である日新システムズは、これまで組み込みシステム開発で培った機器制御技術とネットワーク技術を土台に、エネルギーをはじめとするさまざまな分野において、価値あるスマート社会を実現していくことで新しい未来をみなさまと共に創り続ける企業です。
Webサイト https://www.co-nss.co.jp/
Wi-SUN FANソリューションページ https://www.co-nss.co.jp/media/press/wsf/

※本資料に掲載する会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。


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