京都大学 原田研究室

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次世代スマートメーター/IoT向け国際標準規格 Wi-SUN FAN 無線機500台の高密度接続試験に成功

京都大学 大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループ(以下 京都大学)と、株式会社日新システムズ(以下 日新システムズ)は、次世代スマートメーターおよびIoT(Internet of Things)向けの通信規格として期待されている国際標準通信規格 Wi-SUN FAN(Field Area Network)の実運用に近い環境で必要となる大規模でかつ高密度な接続試験として、無線機500台による多段中継接続試験を行うことに成功しました。


背景

スマートシティやスマートグリッドなど、屋外で通信ネットワークを実現するためには高品質で耐障害性に優れた通信ネットワークが必要となります。Wi-SUN FANはこれらの要求を満たす国際標準通信規格「Wi-SUN」規格の一つで、電気・ガス・水道のメータリングのほか、スマートシティ、スマートグリッド、高度道路交通システム等のセンサー、モニターを用いたIoTと呼ばれる各種インフラ、アプリケーションにおいて、複数のベンダー間で相互運用可能な通信ネットワーク技術として期待されています(図1)。京都大学と日新システムズは、2019年1月に世界で初めてWi-SUN FAN 搭載の認証済み無線機を開発し、2020年3月にはWi-SUN FAN搭載USB基板の商用化を行いました(図2)。また2021年1月には、Wi-SUN FAN搭載USB基板を用いた大規模な接続試験を行うための高密度試験機の開発(図3)と、多段中継接続を駆使し無線機100台からの情報を一つの基幹無線機に集約し収集する試験に成功しました。その後、さらに500台の機器を接続するための各種要素技術の研究開発を行ってきました。

図1
図2 図3
» 図2:Wi-SUN FAN搭載USB基板        図3:無線機100台収納した試験環境

今回の成果

京都大学と日新システムズは、以前に行った無線機100台の伝送特性の評価結果より、収容台数増加のためには、端末のメモリ不足の解決と多段中継時の負荷軽減のためのパラメータチューニングが必須であることを確認し、ファームウェアの改変を行いました。そして500台の無線機を高密度に配置した環境で多段中継接続を駆使し、一つの基幹無線機に集約し収集する大規模マルチホップネットワークの構築を行い、60時間以上通信が安定して維持できることを確認しました(図4)。また多段中継接続時の接続関係を可視化することができました(図5)。さらにスマートメーターの実運用を想定した通信量のデータを各無線機から送信し、大規模高密度環境においても高品質な通信を実現させることに成功しました。


図4
図5

今後の展開

Wi-SUN FAN搭載無線機500台の大規模高密度試験を行うことで、Wi-SUN FANによるマルチホップネットワークが次世代スマートメーターやスマートシティで要求される規模の性能をもっていることが確認できました。また500台の試験環境が整ったことで更なる大規模高密度マルチホップネットワークに関する基礎調査の促進が期待されます。今後は、通信の品質と速度、安定性をさらに向上させるための各種パラメータ設定値を最適化するための調査を行いつつ、接続台数を1,000台まで拡張させ500台の環境で実現できている性能と同程度の性能を担保することを目指します。

本研究開発は、総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)電波COE研究開発プログラムの公募で採択された「電波利活用強靭化に向けた周波数創造技術に関する研究開発及び人材育成プログラム(JP196000002)」における共同型研究開発「Society 5.0の実現に向けた大規模高密度マルチホップ国際標準無線通信システム(Wi-SUN FAN)の研究開発」の一環として実施したものです。

関連する成果

次世代スマートメーター向け国際通信規格 Wi-SUN FANの大規模な高密度接続試験を行う試験機を開発(2021年1月28日 報道発表) https://www.co-nss.co.jp/press/20210128.php

用語説明

» Wi-SUN FAN (Field Area Network)
Wi-SUNアライアンスが制定するスマートメータリング、配電自動化を実現するスマートグリッドおよび、インフラ管理、高度道路交通システム、スマート照明に代表されるスマートシティ等のIoTと呼ばれるアプリケーションを無線で実現するためのセンサー、メーターに搭載するIPv6で多段中継(マルチホップ)可能な通信仕様です。2016年5月16日にバージョン1がWi-SUN FANワーキンググループで制定され、現在は高速通信、低消費電力化などに対応したバージョン1.1の規格化が進められています。物理層にIEEE 802.15.4g、データリンク層に IEEE 802.15.4/4e、アダプテーション層にIETF 6LowPANそしてネットワーク層部にIPv6、ICMPv6、トランスポート層にUDP、そして認証方式としてIEEE 802.1xを採用しています。また製造ベンダー間の相互接続性を担保するための試験仕様なども提供されています。京都大学と日新システムズでは、ローム株式会社と共同でこのWi-SUN FAN 搭載のWi-SUNアライアンス認証済み無線機の開発を2019年1月に世界で初めて行いました。

» 京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室について
京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室は、京都大学 大学院情報学研究科通信情報システム専攻に所属し、ディジタル通信分野に関する研究開発を行っています。特に原田博司教授は、2012年Wi-SUNアライアンス設立時の共同創業者(Founder member)であり、Wi-SUNアライアンス理事会議長(Chair of the Board)として長年活動し、またWi-SUNアライアンスHAN ワーキンググループ議長として、また、Wi-SUN FANを米国電気電子学会IEEEにおいて標準化したIEEE 2857ワーキンググループ副議長として電力会社向け宅内スマートメータシステム用Wi-SUNシステムの技術仕様策定、普及活動を行ってきました。原田博司研究室では、Wi-SUNシステム全般の研究開発を行っており、主に通信方式、電波伝搬・伝送、システム最適化、応用システム等の研究開発を行っています。

» 株式会社日新システムズについて
日新電機株式会社(東証1部上場)の全額出資子会社である日新システムズは、これまで組み込みシステム開発で培った機器制御技術とネットワーク技術を土台に、エネルギーをはじめとするさまざまな分野において、価値あるスマート社会を実現していくことで新しい未来をみなさまと共に創り続ける企業です。
Webサイト https://www.co-nss.co.jp/
Wi-SUN FANソリューションページ https://www.co-nss.co.jp/media/press/wsf/

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