京都大学 原田研究室

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メッシュネットワーク対応 国際標準規格 Wi-SUN FANを搭載した高機能IoTゲートウェイを開発

京都大学 大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループ(以下 京都大学)は、次世代スマートメーター向けの通信規格として期待されている国際無線通信規格Wi-SUN FAN(Field Area Network)を搭載したIoT(Internet of Things)用途向けのゲートウェイを新たに開発しました。さらに、このIoTゲートウェイを用いて生体データや環境データをWi-SUN FANで多段中継してクラウドまで伝送するアプリケーションを開発し、医療機関での実証実験に成功しました。


特徴:IoTゲートウェイ

・ Wi-SUNアライアンス認証済みのWi-SUN FAN 1.0を搭載、通信速度300kbps対応
・ Wi-SUNアンテナダイバーシティによる高い通信品質を実現
・ Wi-Fi(Dual-Band 802.11 ac/a/b/g/n)、Bluetooth5標準装備
・ USB Type-Cによる電源供給、JST 2PINコネクタによる電源供給(オプション)に対応

特徴:アプリケーション

・ 6種類のBLE生体センサー(体温計、血圧計、活動量計、体重計、血中酸素濃度計、非接触体温計)、BLE環境センサー、USBカードリーダの接続に対応
・ USBメモリを利用したアプリインストール機能、インターネットを介したアプリ更新機能(Over The Air:OTA)に対応
・ Wi-SUN、Wi-Fiの受信信号強度の表示、データ伝送機能による通信品質の可視化を実現
・ Wi-SUN、Wi-Fiの接続状況による伝送経路切り替え機能に対応

今回の成果

Wi-SUN FAN無線通信機能搭載のIoTゲートウェイを開発しました(図1)。このIoTゲートウェイにはWi-FiとBluetoothを標準装備、多数のインターフェース(表1)を備えています。また、標準Linuxを搭載しているため、開発環境の提供により様々なアプリケーション開発が可能であり、研究用だけでなく商用としても利用可能です。

図1

さらに、このIoTゲートウェイに、生体データや環境データをWi-SUN FANで多段中継して、パブリッククラウドまで伝送するアプリケーション(図2、図3)を搭載して、医療機関での実証実験に成功しました。
【一般社団法人 聖マリアンナ会:コンテナ型PCR検査室(診療室)にてWi-SUN搭載機器を利用した測定情報の伝送・情報管理について】
https://www.st-marianna-group.com/wp/wp-content/uploads/2021/02/20210304.pdf


図2
図3

今後の展開

今回開発したIoTゲートウェイはスマートフォンバッテリーからの給電も可能であり、さらに、ログやWi-SUN伝送情報を取得、蓄積することができるため、広範囲にIoTゲートウェイを配置した大規模実証実験が可能です。また、IoTゲートウェイとアプリケーション、パブリッククラウドを統合したシステムでは、新たなセンサーを追加する場合にもBLE部分の開発のみで接続が完了するため、医療や災害用途だけでなく、工場やスマートシティへの活用も期待できます。 開発したIoTゲートウェイは、5月末を目標に商用化する予定です。

本研究開発は、内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)ならびに総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)電波COE研究開発プログラムの公募で採択された「電波利活用強靭化に向けた周波数創造技術に関する研究開発及び人材育成プログラム(196000002)」における共同型研究開発「Society 5.0の実現に向けた大規模高密度マルチホップ国際標準無線通信システム(Wi-SUN FAN)の研究開発」の支援を受けて実施したものです。

用語説明

» Wi-SUN FAN (Field Area Network)
Wi-SUNアライアンスが制定するスマートメータリング、配電自動化を実現するスマートグリッドおよび、インフラ管理、高度道路交通システム、スマート照明に代表されるスマートシティを無線で実現するためのセンサー、メーターに搭載するIPv6で多段中継(マルチホップ)可能な通信仕様です。2016年5月16日にバージョン1がWi-SUN FANワーキンググループで制定され、現在は高速通信、低消費電力化などに対応したバージョン1.1の規格化が進められています。物理層にIEEE 802.15.4g、データリンク層に IEEE 802.15.4/4e、アダプテーション層にIETF 6LowPANそしてネットワーク層部にIPv6、ICMPv6、トランスポート層にUDP、そして認証方式としてIEEE 802.1xを採用しています。また製造ベンダー間の相互接続性を担保するための試験仕様なども提供されています。京都大学と日新システムズでは、ローム株式会社と共同でこのWi-SUN FAN 搭載のWi-SUNアライアンス認証済み無線機の開発を2019年1月世界初で行いました。

» 京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室について
京都大学 大学院情報学研究科通信情報システム専攻に所属し、ディジタル通信分野に関する研究開発を行っています。特に原田博司教授は、2012年Wi-SUNアライアンス設立時の共同創業者(Founder member)であり、Wi-SUNアライアンス理事会議長(Chair of the Board)として長年活動し、また、 Wi-SUNアライアンスHAN WG議長として、電力会社向け宅内スマートメータシステム用Wi-SUNシステムの技術仕様策定、普及活動を行ってきました。原田博司研究室では、Wi-SUNシステム全般の研究開発を行っており、主に通信方式、電波伝搬・伝送、システム最適化、応用システム等の研究開発を行っています。

※本資料に掲載する会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。


[本プレスリリースに関するお問い合わせ]
原田博司(はらだ ひろし)
京都大学 情報学研究科 教授
Tel:075−753−5317
E-mail:hiroshi.harada[at]i.kyoto-u.ac.jp

[報道・取材に関するお問い合わせ]
京都大学 総務部 広報課 国際広報室
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