京都大学 原田研究室

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長距離化公共ブロードバンド移動通信システムによる単区間100km超映像伝送に成功
〜100km超、双方向、映像伝送可能なIoT用無線通信システムを開発、実証〜

京都大学大学院情報学研究科(以下「京都大学」)原田 博司教授の研究グループと株式会社日立国際電気(以下「日立国際電気」、代表取締役 社長執行役員 : 佐久間 嘉一郎)は、このたび公共ブロードバンド移動通信システムとして開発を行ってきた広域系Wi-RAN(Wireless Regional Area Network)システムに長距離伝送機能を新規追加し、筑波山(茨城県つくば市)-城山湖(神奈川県相模原市)間102kmのブロードバンド無線データ伝送に成功しました。この試験は5W出力無線機(中心周波数:195MHz、公共BB帯域)および40W出力無線機(中心周波数:214MHz、VHF-High帯域)の二種類の無線機を用い、それぞれ上り下りトータル9Mbpsのデータ伝送が安定して行うことができることを実証し、さらに、ネットワークカメラを用いた双方向での映像伝送の実証を行いました。このような100km超、双方向、映像伝送可能なIoT(Internet of Things)用無線通信システムは世界初の成功となります。


ポイント

・物理フレーム最適化により最大伝搬距離を4 倍に拡大
・簡易設置で筑波山-城山湖間102kmの無線リンクを実証
・双方向での9Mbpsの伝送速度の実現、また映像伝送に成功

研究の背景

公共ブロードバンド移動通信システムは、平時においては、各種センサー、メーター、モニターからのビッグデータを広域に収集するためのIoT用無線基幹回線として、また災害時においては、現場の状況を広域に高品質な映像により省庁、自治体等に伝送するためのIoT用無線基幹回線として導入がされつつあります。このシステムはすでに電波産業会(ARIB)においてもARIB STD-T103およびSTD-T119として標準化もされています。このシステムは通信方式にOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)/TDD(Time Division Duplex)を用いており、長距離伝送を行うことができますが、上り・下りのギャップタイムの規格上の制限から、最大伝搬距離は30km程度にとどまっていました。

研究の内容

今回、上記ギャップタイムを長距離伝搬用に最適化および物理層の改造を行いました。これにより、原理的には最大120kmの伝搬が可能になります。また、ハードウェアについても長距離伝搬用途に40W出力の無線機の開発を行いました。

実験は図1に示す5W出力無線機および40W出力無線機を用い、筑波山京成ホテル様、相模川発電管理事務所様のご協力のもと行いました。

筑波山-城山湖間は図2に示すように直線距離102 kmの見通し環境となります。アンテナは5素子八木アンテナ(利得:10dBi)を用い、中心周波数は195MHzおよび214MHzで実験を行いました。アンテナ設置環境を図 3に示します。 アンテナ、無線局、モニタ用PCおよびネットワークカメラの設置は各無線局で30分以内で完了し、無線機の電源投入後数分で無線リンクの確立に成功しました。アンテナの方向合わせについても、おおよその方向に合わせるだけの簡易設置で100kmを超える無線リンクを実現することができました。

試験結果を表 1にまとめます。5W出力無線機、40W出力無線機ともに非常に良好なCINR(Carrier to Interference and Noise Ratio)が得られており、変調符号化方式は本システムの最高レートに対応する64QAM-符号化率3/4での通信ができました。実際にデータ伝送試験を行い、上り下りトータルで約9Mbpsの安定した通信ができることを実証しました。さらに、双方向で映像伝送試験を行い、安定したリアルタイム双方向動画伝送に成功しました(図 4)。

今回の試験では、樹木等による遮蔽損失や長距離伝搬時に懸念される長遅延波の影響も無視できる理想的な伝搬環境であり、5W出力無線機においても64QAM-符号化率3/4での通信が確立できましたが、一般的な長距離伝搬環境においてはさらに10~20dBのマージンを考慮に入れる必要があることから、信頼性の確保という観点から送信出力は10W~40Wクラスの無線機を用いるのが適していると考えられます。

図1


図2


図3


» 表1:試験結果
表1


図4


今後の展開

今回、伝搬距離100kmを超える環境下での双方向映像伝送が可能であることが実証できました。この結果を踏まえ、長距離ブロードバンド無線通信の社会実装に向け多種多様なアプローチを行っていく予定です。

本研究開発において、5W出力無線機に関しては、内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)原田博司プログラム「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」において開発した無線機をベースに開発し、中心周波数214MHz を用いた40W出力無線機については、現在、総務省において検討されている「放送用周波数VHF-High帯域の活用方策」に関する提案ならびに実証試験の一環として実施したものです。



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原田 博司(はらだ・ひろし)
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