京都大学 原田研究室

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国際無線通信規格 Wi-SUN FANをArm Pelion IoT Platformでの実現に成功

京都大学 大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループ(以下京都大学)、株式会社日新システムズ(以下日新システムズ)、ローム株式会社(以下ローム)の3者は、英Arm(本社:英国ケンブリッジ、日本法人:神奈川県横浜市、以下Arm)の協力を得て、国際無線通信規格Wi-SUN FAN(Field Area Network)に準拠したソフトウェアスタックをArmのIoTデバイス組込み用OS「Mbed OS」に対応させることに成功しました。さらに、本プロジェクトのハードウェア上に、Arm がIoTデバイス管理サービスの構成要素として提供しているクライアント機能を実装し、Wi-SUN FANのネットワーク経由で同社のIoTプラットフォーム「Arm Pelion IoT Platform」への接続とデータ送受信を行わせることに成功しました。

今回の成果

今回、京都大学と日新システムズ、ロームの3者は、ArmのMbed OSを搭載したマイコンとロームの無線通信デバイス(RF)を組み合わせたハードウェア上に、日新システムズ、京都大学が開発した国際無線通信規格Wi-SUN FANソフトウェアを搭載しました(図1)。



図1

さらにこのハードウェア上に、Armが提供するデバイス管理サービス「Pelion Device Management」のクライアント機能「Device Management Client」を実装し、Wi-SUN FANのネットワーク経由でPelion IoT Platformへの接続と各種センサーデータの収集、その収集データのクラウドでの表示に成功しました(図2)。



図2

Pelion IoT Platformに接続することにより、Mbed OS 上で動作するWi-SUN FANを搭載した多数のデバイス管理を、個別にセキュアに簡単に行うことができます。また、Mbed OSには様々なライブラリやサンプルコードが用意されているため、Wi-SUN FANを用いた様々なアプリケーションを迅速に開発することが可能になります。

今後の展開

今後、日新システムズと京都大学は、Mbed OS上のWi-SUN FANソフトウェアをWi-SUN アライアンスが新たに開始するWi-SUN FAN認証試験に合格させ、技術適合性・相互接続性を確保するとともに、本ハードウェア/ソフトウェア構成でのシステム構築・運用のサービス化を検討し、大規模なIoT/メータリングシステムに対して採用を働きかけていく予定です。 また、ロームは、マイコンとRFが実装されたWi-SUN FAN対応無線通信モジュールの量産に向けた開発を進めていきます。

本成果は2018年11月14~16日の日程で開催される組込み総合技術展「Embedded Technology 2018」の日新システムズおよびArmのブースにおいてデモ展示を行う予定です。 また、2018年12月5日に開催されるArm社イベントArm Mbed Connectにおいても本成果の詳細を紹介する予定です。

用語説明

» Wi-SUN FAN (Field Area Network)
Wi-SUN FAN は、Wi-SUNアライアンスが制定するスマートメータリング、配電自動化を実現するスマートグリッドおよびインフラ管理、高度道路交通システム、スマート照明に代表されるスマートシティを無線で実現するためのセンサー、メーターに搭載するIPv6で多段中継(マルチホップ)可能な通信仕様です。2016年5月16日にWi-SUN FANワーキンググループでバージョン1が制定。物理層部にIEEE 802.15.4g、データリンク層に IEEE 802.15.4/4e、アダプテーション層にIETF 6LowPANそしてネットワーク層部にIPv6、ICMPv6、トランスポート層にUDP、そして認証方式としてIEEE 802.1xを採用しています。 また、製造ベンダー間の相互接続性を担保するための試験仕様等も提供されています。


» Wi-SUN アライアンス
Wi-SUN アライアンスは、IEEE 802.15.4g 規格をベースにエネルギーマネージメント、防災、工場等の各種アプリケーションを実現するために他のオープンな国際標準規格と融合させ、製造メーカ間で相互接続可能な国際無線通信規格「Wi-SUN Profile」を制定する任意団体です。現在、会員企業は全世界に100 社以上おり、スマートメーターと宅内エネルギー管理システム(HEMS)との間の通信規格「Wi-SUN ECHONET」は全国の電力会社に採用されています。すでに当該仕様が搭載されているスマートメーターは1,000万台以上出荷されており、今後は東京電力管内で2,000万台以上出荷される予定です。 詳細はhttp://www.wi-sun.orgをご参照ください。


» 京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室について
京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室は、京都大学 大学院情報学研究科通信情報システム専攻に所属し、ディジタル通信分野に関する研究開発を行っています。特に原田博司教授は、2012年Wi-SUNアライアンス設立時の共同創業者(Founder member)であり、現在Wi-SUNアライアンス理事会議長(Chair of the Board)として、また、 Wi-SUNアライアンスHAN WG議長として、Wi-SUNシステムの技術仕様策定、普及活動を行ってきました。原田博司研究室では、Wi-SUNシステム全般の研究開発を行っており、主に通信方式、電波伝搬・伝送、システム最適化、応用システム等の研究開発を行っています。


» 日新システムズについて
日新電機株式会社(東証1部上場)の全額出資子会社である日新システムズは、これまで組み込みシステム開発で培った機器制御技術とネットワーク技術を土台に、エネルギーをはじめとする様々な分野において、価値あるスマート社会を実現していくことで新しい未来をみなさまと共に創り続ける企業です。 日新システムズのホームページ http://www.co-nss.co.jp/ Wi-SUN FANソリューションページ https://www.co-nss.co.jp/media/press/wsf/


» ロームについて
ロームは、1958年(昭和33年)設立の半導体・電子部品メーカです。自動車・産業機器のほか、民生・通信など多様な市場に対し、品質と信頼性に優れたLSIやディスクリート、電子部品を供給するとともに、システム全体を最適化するソリューション提案を行っています。 また、Wi-SUN FANに対しては、要素技術で欠かせないIEEE802.15.4g規格に対応するRF技術やWi-SUN FANスタックを搭載する最適なMCUの選定技術、それらのモジュール製品化技術などを保持しており、Wi-SUN FANに対応した無線通信モジュールの量産に向けて開発を進めています。これまで京都大学・株式会社日新システムズとの共同開発で、世界初のWi-SUN FAN対応無線機の基礎実験に成功したのち、小型IoT用ゲートウェイや広範囲情報収集システムの開発を行ってきました。今後もロームは、急拡大するインフラの無線化やIoT機器に向けてWi-SUN FANの開発を推進していきます。


※Arm は Arm Limited (またはその子会社)の登録商標です。その他のブランドあるいは製品名は全て、それぞれのホールダーの所有物です。(C)1995-2018 Arm Group.

※その他、本資料に掲載する会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。


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